はないであろうか。住民の主体性の強化なしに分権化は成り立たない。住民側も、議論の「盛り上がりのなさ」を嘆いているだけではすまないのである。
2. 住民組織の意義と特性
地方自治とは、一般には、ある区域に区画された地方公共団体に属する住民の自治であり、議会と執行機関という公的組織によって実現が図られる。住民はこの公的組織の機構と運営に、自治の主体者として程度差はあれ、直接・間接に、あるいはフォーマル・インフォーマルに参加する。それとともに、住民は、基礎的地方公共団体内の区域をさらに小さく区切った小区画において、議会と執行機関という公的組織を1つにしたような、類似してはいるが法律に基礎を置かない共同の組織を作って自治を行うことが多い。これが町内会・自治会あるいはコミュニティと呼ばれるものであることはいうまでもない。
住民自治とは、住民の、住民組織による、住民のための自治である。住民の決定への参加が力をもつための条件は、住民が「組織化された集団に参加」(K.ニュートン)することである。イギリスの政治学者W.ハンプトンが強調するように、そこで想定されている組織は政党や教会だけでなく、「自発的な住民組織」も含まれる(『地方自治と都市政治』2nd, 1996)。この事情は各国において共通するものであろう。こうして、参加型分権の進展につれて地域住民組織の役割が再評価されるようになってきた。そして、住民参加機能をもつ住民組織について関心が高まるとともに、住民自治の実態の解明とその発展の筋道を明らかにする課題が、学問的にも実践的にも追求されるようになってきたのである。
現在、地域自治の拡大は世界的な流れであり、とくに都市の大きな自治体では、自治の事業は自治体の努力だけでできるものではないことから、自治の担い手としての住民とその組織の果たすべき役割が注目されてきている。国際的な動向と各国の住民組織の特徴を知ることは、地域自治の主体形成にとって欠かせない教訓を与えてくれるものとなるはずである。日本における従来の住民組織研究は基本的に西欧社会を前提とし、町内会等は欧米には存在しない「特殊日本的性格」のものと見る傾向の強いものであった。現在、こうしたイデオロギー性を克服し、より客観的な方法によって各国の住民組織の研究を行う条件が熟してきた。その過程で、従来見られた1国対1国の比較では自覚的に追求されることの弱かった、対象組織の普遍性をもった定義が不可欠となった。それは次の3つの指標で定義することができよう。
a)排他的地域性
隣接地域組織と重なり合わない地域範囲で組織されていること、
b)地域共同管理性
地域生活に関わって起こる諸問題に、住民が共同して対処する活動をしていること、
c)地域代表性
以上の特質の結果として地域(住民)を代表することが住民および行政によって認められた組織であること。
現実の組織は、これら以外にさまざまな特徴をもっている。例えば、組織の規模(住民数や区域の面積)、組織構成単位が個人か世帯(事業所も含む)か、その設置が国家や自治体の法令に規定されたものであるか否か、加入は任意か全員(自動)か、活動の種類や程度、その機能は公私のどの範囲にまで及ぶか、役職者の属性・階層等である。
日本の住民組織(町内会)の特質としては、従来、公行政の事務の一部を私的な組織に負わせていること、世帯単位で全戸加入制がとられていることなどを挙げて、公私二分法および近代的な個人主義的組織原理を前提とする批判が向けられてきた。ただ、近年は、公私の二分化よりも両者の接合領域(共同の領域)の拡大が注目され、住民参加も一過性の行事でなく、間接民主主義を補完する恒常的な制度として保障されていくものとなっており、こうした事態を踏まえるとき、町内会は次のように定義できよう。すなわち「原則として一定の地域的区画において、そこで居住ないし営業するすべての世帯と事業所を組織することをめざし、その地域的区画内に生ずるさまざまな(共同の)問題に対処することをとおして、地域を代表しつつ、地域の(共同の)管理に当たる住民自治組織」(東海自治体問題研究所編『町内会・自治会の新展開』、編集代表:中田実、1996年、自治体研究所刊、31−32貢)これにたいし、これまでわが国でみられた町内会の代表的な特徴づけは、中村八朗によると「@加入単位は個人でなく世帯、A一定地域居住に伴い加入は半強制的または自動的、Bそ
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